サイト内検索
お問い合わせ サイトマップ
文字サイズ調整 文字サイズナビ 小さめ やや小さめ 標準 やや大きめ 大きめ 文字サイズナビ

文書・画像等を引用、転載される場合には、
必ず引用元として「日本ガラパゴスの会(JAGA)」を明記してください。

ページ要旨101112参考文献

1.危機に直面するガラパゴス


 ガラパゴスの稀有な生物多様性を失う危険性は、主として次の3つの観点から考える必要がある。

  1. 今でも本来の生物多様性の95%が維持されている世界で最後の海洋諸島であり、生物学的及び生態系的な完全性の世界的な"判断基準"を象徴している。
  2. 諸島はユニークであり、その生物多様性はチャールズ・ダーウィンの偉業を通じて科学の歴史及び人々の考え方に大きな影響をもたらしてきた。
  3. ガラパゴスの生物多様性は地域経済の基盤であり、また、エクアドル経済への重要な貢献者でもある。

 ガラパゴスにおける開発の現在の方向性が継続すれば、観光産業及びその関連ビジネスの失敗を招くだろう。この失敗はガラパゴス住民とエクアドル国家の両者にとって重要な経済的資源の損失をもたらすだろう。外来種の侵入、汚染、及び天然資源の過剰採取は持続不可能な経済モデルの徴候である。このモデルがもたらす生態学的ダメージは不可逆的であり、かけがえのない地球の宝を失うことに帰結する。

 他の諸島と同様に、ガラパゴスは脆弱である。ガラパゴスの生物多様性は、外来種、天然資源の過剰採取、汚染、自然災害・人為的災害及び気候変動に非常に影響を受けやすい。今まで、ガラパゴスの生物多様性は比較的よく維持されてきている。事態は、科学者たちが生態学的復元よりむしろ標本採集に重点的に取り組んだ一世紀前よりも間違いなくよくなっている。しかし、諸島の生物多様性の長期的未来は、短期的な持続可能な開発に関する意思決定にかかっている。

 ガラパゴスにおける持続可能な開発は、世界中の島嶼の開発に影響するのと同様の要因により複雑化している。世界の島々の大多数は資源に乏しく、市場性の高い商品がほとんどなく、外部の市場への輸送コストは高い。島における生産コストは、規模の利益がないこと、また、ほとんどの原材料を本土から輸送しなければならないために高い。さらに、一般的に、島では居住人口が少なく教育にコストがかかるため、教育された人材が少ない。

 持続可能な開発に関わるこのような制限が、住民に水道、教育及び医療などの公共サービスを提供すべき地元の自治体の能力にも影響を与えている。島嶼におけるこれらのサービスの提供は、規模の経済の欠落、育成された人材の不足、及び高い原材料コストにも苦しんでいる。要するに、島嶼での生活は大陸での生活より困難であり費用がかかる。

 このような島嶼の社会経済学的及び生態学的な特徴並びにガラパゴス保全の世界的重要性は、この諸島が開発のための特別なモデルを必要としていることを意味している。

 これまで、ガラパゴスにおける開発は、市場主導の開発に焦点を絞り、公平性や長期的に持続可能な開発には最小限の考慮しか払わない"開拓者精神"に基づいて行われてきた。このことは、急速な成長と繁栄の時代を経て、やがては破局に至ってしまう事業によく反映されている。オットセイの乱獲及びガラパゴスを拠点とした捕鯨業のような先例とともに、最近の漁業にもいくつかの事例が挙げられる。我々は、現在、観光開発にも類似のパターンを見ている。

 ガラパゴスの現在の状況をもたらした原因については多くの議論がある。概してこれらの論議は確かな情報ではなく、仮説と経験に基づいている。次に示すような意見はガラパゴスに関してよく見られる議論である。

  1. 海外の利害が観光産業をコントロールしている。
  2. 観光産業は地元に利益をもたらさない。
  3. ガラパゴス国立公園管理局及び国立ガラパゴス庁(INGALA)は制度/組織として失敗してきた。
  4. 国際社会はガラパゴス保全に多額の資金を費やしてきたが、その効果はほとんどない。
  5. キトの中央政府の不安定性が危機を引き起こした。
  6. 政府は人民を顧みず、動植物のことしか考えていない。
  7. ガラパゴスにおける政治的リーダーシップに今日の問題の根本的原因がある。

 これまで、こうした議論は包括的・技術的な分析ではなく、解釈や利害関係者の特定の観点に焦点を絞っていた。本稿では、生物多様性 (Bensted-Smith, 2002年)、紛争(MacDonald, 1997年、Heylings と Cruz, 1998年、Bonilla, 2007年)、観光産業(Epler, 1993年、MacFarlamd, 2001年、Blanton, 2006年、Epler, 2007年)、ガラパゴス経済(Taylor, Dyer ら, 2003年、Taylor, Hardner ら, 2006年、Taylor, Stewart ら, 2006年)、及び移民(Kerr, Cardenas ら, 2004年)の分析を含む、ガラパゴスに関するいくつかの調査研究を要約する。

 ガラパゴスにおける意見の不一致は、実際の違いから生じるというよりむしろ、観点の違いに起因しているようである。多くの人々は、統治、制度/組織、教育システム、経済及び諸島のデリケートな生態系などの面で、ガラパゴスが危機を経験しつつあることを認識している。多くの利害関係者はガラパゴスの開発が間違った方向へ進んでいると確信しており、また、その変化率が指数関数的であることを懸念心配している。また、ガラパゴスにおける変化の根本的な原動力は観光産業の成長にあるということでは大方の見解は一致している。

 ガラパゴスにおける諸問題の根本的原因。異なる関心と真の協力の構築を結びつけることができるリーダーシップ。包括的分析及び異なる利害集団間の真の協力による解決策の実行。こうしたことに焦点を絞る緊急の必要性があることを認識することが非常に重要である。原因への対処を誤ると、長期的解決策に対する現実味のある希望を持てないまま、問題をより複雑にしてしまう。

 エクアドル大統領は、ガラパゴスが危機に直面しており、その保全は国家的優先課題であることを示した。国際連合教育科学文化機関(UNESCO)と国際自然保護連合(IUCN)もまた、ガラパゴスの保全とその未来への関心を表明した。大統領宣言及びユネスコによるガラパゴスの危機遺産リストへの登録は、持続可能な社会の構築を通じて、ガラパゴス保全の未来を確実なものにするための最高かつ最後の機会を提示している。


ページ要旨101112参考文献
copyright(c)2005-2008 JAGA All Rights Reserved.
本サイトに収録・掲載されている文章・写真・イラスト等の無断転 載を禁じます。
本サイトのコンテンツの著作権は、日本ガラパゴスの会ならびにそれぞれの著作物の作成者に帰属します。
なお、リンクはフリーです。 本サイトに関するお問い合わせはこちらをご覧ください。